新型コロナウイルス感染症の猛威が全世界を覆い、その影響は女性や子どもの自殺の増加、虐待やDVの増加にみられるように、社会の弱い存在に色濃く顕われました。
人と人とが集い、触れ合うことが制限され、多くの人が孤立し不安と閉塞感を抱える中、社会は深刻な対立と分断に見舞われています。
ウクライナ侵略などをきっかけに、軍備増強や先制攻撃、核武装などの声が強まっています。
疫病や災害、戦争で、苦しむのはより弱い存在の人たちです。
私たちは、感染症から命と健康を守る保健・医療体制をしっかりとさせ、誰も孤立をしない、いつでも誰かとつながっていられる社会をつくっていかなければなりません。
エネルギーも食料も自給できない日本が講じるべき安全保障は、軍備強化よりも平和外交と自給率の向上です。
そして待ったなしの気候危機に立ち向かい、原発によらないカーボンニュートラルを1日も早く実現すること。
生物多様性を守り、豊かな自然環境を子どもたちに残すことです。
国籍や民族、障害の有無や性別や性的志向によって差別されずにその人らしく生きられる社会。多様な働き方が認められ、様々な人が自分にあった働き方が出来る社会。
それを埼玉から生み出していく。
「埼玉県市民ネットワーク政策2023」はそのための提案書です。
そして大勢の市民でこれを育てバージョンアップしていくことが前提です。
一緒につながり、共に生きるまちをつくっていきましょう。

つながる 共に生きる 私たちのまち

    ~埼玉県市民ネットワーク政策2023~

1.持続可能で豊かな地域循環型社会を次世代に

(1) 気候危機に対応した再生可能エネルギーを推進し、エネルギーの地産地消と脱原発、省エネをすすめます

①県内の電気を可能な限り再生可能エネルギーで自給できる仕組みづくり

・配水施設や汚泥処理施設における小水力・バイオマス発電で県内施設の早期有効活用
・新建築物を高断熱化し、再エネ設備や蓄電池等を備える等、ZEH住宅の普及促進
・既存のビルやマンションなどの建築物の屋上に再エネ設備や蓄電池等を備えるための支援
・県施設で利用する電気は再生可能エネルギー100%をめざす。
・県施設におけるZEBの義務化
・ごみ処理発電など地域内で発生した再生可能エネルギーを活用する地域新電力の拡大

   ※ZEB(net Zero Energy Building)、ZEH(net Zero Energy House)は、建築物におけるエネルギー消費量を省エネ性能の向上や再エネの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味でゼロ又は概ねゼロとなる建築物のこと。

②「みい電」を拡げ、首都圏で再エネ電力の共同購入をすすめる

※「みんなでいっしょに自然の電気」、略して「みい電」

③埼玉から90km圏内の東海第二原発再稼働に反対し地域から脱原発

(2) 循環型・環境保全型農業をすすめ自給率の向上をめざし埼玉の食と農を守ります

①新規就農者や家族農家・小規模農家を支援し、農地の保全と県産農産物の自給率向上
②地場産食材やオーガニック食材を学校給食に活用し、安定的な販路拡大で有機農家を支援
③農地や耕作放棄地におけるソーラーシェアリングの普及で食も電気も地産地消

(3) プラスチックごみや食品ロスを減らし、生ごみの堆肥化でごみを燃やさないしくみ

①生ごみ処理器やコンポストの購入補助制度の拡充でごみを燃やさないゼロ・ウェイスト埼玉をめざす
②「埼玉県プラごみゼロ宣言」でプラスチックごみの減量を啓発しワンウェイプラの発生を抑制

(4) 森林を整備し、水源の保全や環境教育の充実で川や森のあるまち埼玉の生物多様性を守ります

①県内自治体における生物多様性保全戦略の策定と実態調査で30by30を達成
②森林伐採によるメガソーラー建設を抑制し環境や景観に配慮した条例やガイドラインの制定
③農業体験や自然体験などのエコツーリズムを通して環境教育と地域振興を両立
④河川や水田の生物多様性を活かし環境と調和した流域治水対策
⑤早急に森林整備を進め生態系を保護し、水源を守ります。また山の持つ保水機能を高め、土砂崩れや水害を防ぎます。

※30by30・・・2030年までに陸と海の30%の保全を目指す目標

2.子どもや若者の権利を尊重し、誰もが自分らしく育つ埼玉

(1) 子どもの権利条例を制定し、子どもが真ん中の社会をつくります

①県内自治体における(仮)子どもの権利条例制定をすすめる
②子ども家庭総合相談窓口の充実で児童虐待防止策の強化 
③プレーパークの常設自治体を増やし子どもがどろんこで思い切り遊べる場の確保
④不登校の子どもと親に寄り添いフリースクールなど多様な学びの場を支援
⑤こども食堂や放課後子ども教室など地域と連携した居場所づくりの支援
⑥引きこもり相談支援窓口の拡充
⑦里親制度の周知啓発で生みの親と暮らせない子どもたちに家庭を

(2) すべての子どもに平等で豊かな教育環境を

①障害のある子もない子も同じ教室で共に学ぶインクルーシブ教育の推進
②特別支援学校の過密化を解消し、特別支援学級や通級指導教室の充実でどの子も学びたい場所で学ぶ環境を保障
③日本語指導教員の拡充などで外国にルーツを持つ子どもの高校進学率向上
④埼玉朝鮮学校への補助金支給を再開しどの子も平等に教育を受ける権利を保障
⑤制服や算数セットやなど学用品の保護者負担を軽減
⑥スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの増員で子どもの心に寄り添う
⑦時代にそぐわないブラック校則の見直しをすすめる
⑧教員や支援員の増員、学校行事や部活のあり方の見直しで教職員の働き方を改革
⑨教職員向けの性教育の研修を強化するとともに、包括的性教育を進める

(3) こどもの心とからだの健康を守ります

①コロナ禍、ストレスや運動不足による体力の低下を防ぎ、子どもが思い切り体を動かす時間や場所の確保
②タブレット端末やスマートフォンの活用による視力低下や電磁波対策
③「エコチル調査」を活かした教育・保育の現場や家庭への啓発
④副反応被害が多発しているHPV(子宮頸がん)ワクチンの定期接種勧奨再開は中止を

3.その人らしく働き、人間らしい暮らしが保障される埼玉

(1) ワーカーズ・コレクティブやワーカーズコープなどの労働者協同組合やNPOなど、地域に必要な仕事おこしを支援します

①ワーカーズ設立に係る相談窓口の設置や学習会の開催で仕事おこしを支援

※労働者協同組合とは、働く人々や市民がみんなで出資・話し合いながら運営し、人と地域に役立つ仕事をつくる協同事業のこと

(2) 子育て中でも、高齢でも、障害があってもその人らしく働くことを応援します。

①趣味や特技を生かした仕事で地域とつながる「月3万円ビジネス」などの講座の実施
②様々な障害特性に応じた短時間勤務などを導入し、県庁内の障害者雇用を拡げる
③農福連携で障害のある人が生き生きとやりがいを持って働ける場を増やす

(3) 生活困窮に陥った人に寄り添い、暮らしを支えます。

①生活保護を迅速に受けられるよう、申請時の扶養照会を廃止
②県営住宅や市営住宅を活用した居住支援・公営住宅の拡充
③フードパントリーなどの食糧支援を継続的に行うための人的・物的等の支援

(4) 長時間労働を是正し、ワークライフバランスの実現を目指します。

4.年をとっても障害があっても地域で元気に安心して暮らせる埼玉

(1) 地域医療・孤立しない介護の充実に取り組みます。

①訪問医や総合医の確保・育成や医療と介護の連携
②コロナによる重症化や急変に対応できる保健所体制の強化
③認知症になっても住み慣れた街で暮らすための支援

(2) 多様な移送サービスやコミュニケーション手段を拡充します。

①地域公共交通、自治体を跨いだデマンド交通、障害者移送サービスなど多様な交通ネットワークの構築
②加齢性難聴者への補聴器購入補助制度の創設
③手話通訳士の養成拡大、音声認識アプリの活用を推進
④全身性障害者介護人派遣事業など自薦登録型の支援制度の充実

(3) ケアラー支援条例に基づいた施策をすすめ、県内自治体へ拡げます。

①市町村単位のケアラー支援条例を制定し庁内連携体制を確立 
②教育委員会や子ども部局と連携してヤングケアラーの実態を調査し、寄り添った支援。
③ケアラー支援者育成研修を強化し各自治体に介護者サロンの増設。

(4) 看護師や介護士、保育士などエッセンシャルワーカーの処遇改善に取り組みます。

(5) 医療的ケア児が保育所や学校へ通うために必要な支援に取り組みます。

①医療的ケア児の子どもや親が悩みを語り合えるネットワークの構築を支援
②看護師の学校配置をすすめ医療的ケア児への支援拡充

(6) 地域で暮らす障害のある人やその家族を支援します。 

①地域に開かれたグループホームの拡充
②ショートステイ施設の拡充やレスパイトケアの充実

5.福祉・環境に配慮した防災・減災対策

(1) 女性の防災リーダーを増やし、防災計画や避難所運営に女性の視点を活かします。

(2) 避難所開設訓練やHUG(避難所運営ゲーム)の実施で障害者や高齢者にやさしい防災対策をすすめます。

①地域防災を子どもたちと一緒に学ぶしくみづくり

(3) 子どもの目線を取り入れた通学路の安全点検を行い、改善に活かします。

①行政だけでなく、市民や子どもも一緒になった通学路の安全点検やワークショップの開催。

(4) 異常気象に対応し環境に配慮した水害対策に取り組みます。

①川の生態系に配慮した治水を進め、遊水地などのグリーンインフラを生かした多重防御治水
②身近な緑や水辺を生かし、田んぼダムや緑を生かした保水力の向上 

6.憲法を活かし多様性を認め合うジェンダー平等社会の実現

(1) 「埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例」に基づいたLGBTQ施策をすすめ、性別を問わずパートナーと安心して暮らせる埼玉を目指します。

①埼玉県パートナーシップ・ファミリーシップ登録制度の創設と自治体間連携の拡充
②県庁や教育部局への差別やアウティング防止に関する研修を強化

(2) 意思決定の場に女性を増やし、あらゆる場面の男女共同参画をすすめます。

①全市町村で女性議員を増やすと同時に、管理職の女性割合30%以上、審議会の女性割合50%を目指す
②男性の育児休業取得率を向上させ、夫婦共同での育児や家事の推進

(3) DVや性暴力被害者に寄り添った支援体制を強化します。

①高校生や若者を対象としたデートDV予防講座の普及

(4) 移民、難民と共に生きる、多文化共生のまちづくりをすすめます。

(5) 戦争する国づくりに反対し、埼玉から平和守ります。

①県内の戦争関連史跡や資料の保存・収集を行い、埼玉県平和資料館の充実
②従軍慰安婦の記述削除など、戦争の惨禍と歴史の事実を伝えない教科書の採択や教育への政治介入を許さない

7.市民が主役のまちづくりで埼玉の民主主義を強くする 

(1) 市民と共にまちづくり進めます。

①予算編成段階での市民意見の反映で透明な財政運営を
②5年以上の計画策定、改定スケジュールの公開
③大勢の市民と調査活動、ワークショップに取り組む
④ヒアリング集会、一言提案に取り組む
⑤活動報告会の開催

(2) 市民に開かれた議会を目指します。

①議案賛否の公開や常任委員会や特別委員会、議会運営委員会など全委員会のインターネット中継実施など開かれた議会
②子連れ傍聴室の設置など子ども連れでも傍聴しやすい議会
③政務活動費の使途・領収書のホームページ上での公開
④議会主催の議会報告会、懇談会の開催
⑤市民モニター、サポーターの仕組みをつくる
⑥子ども議会を開催し、議会で決定した施策には予算措置

(3) 各自治体でハラスメント根絶条例を制定しセクハラ・パワハラのない社会をつくります