埼玉県市民ネットワーク通信 NO.43 2008年4月
【目 次】
見て来たよ!神奈川・厚木でひろがる市民パワー自分たちで作っちゃう
厚木ネットでは、自分たちの生活基盤である地域をどんなまちにしたいのか、そのために必要なサービスは何かを考え、「必要なものは作る」という姿勢で、市民事業を起こしながらまちづくりをしてきました。この市民参加型の政治を進めることで厚木ネットはまちを変えてきました。
1990年家事介護ワーカーズの立ち上げから始まり、高齢者支援・子育て支援・NGOショップなど[7施設・2ショップ・5事務所]でサービス活動を展開していますが、その活動に必要な体制はNPO法人・社会福祉法人格をとり、ワーカーズコレクティブなどによって支えられています。
それぞれの施設に実におおくのスタッフがいてそのネットワークの豊かさに驚かされます。ワーカーとして働く障がい児を持つ女性は「こういう働き方なら自分でも働けると思って参加した」と言います。
今の福祉制度には無い[サービスハウス]というネーミングの「ポポロ」では施設内にサービスを作らず、利用者が地域にあるサービスを選択することで、利用者にも施設にもメリットがあるとのことです。「地域で暮らす」ことが自然に実現されています。
これらの施設についてはワーカーズのスタッフ・利用者、地域・行政の人たちにも「ネットが作った施設」とはっきりと認識され「生活は政治」が自分のこととして実感されている手ごたえがあるとも聞きました。
ヒューマンサポートネット代表叉木さんから「原点を忘れない」「何のためにやるのか、目的を持つ」そして「なぜ必要なのかを語り続ける」との運動スピリッツを聞き、リセットで活動を始めた我がネットに思いをはせながらの研修でした。
(鴻巣/吹上ネット 村上愛子)
市民事業っていい!
仕事と生き方の関係を大きく変える「市民事業」が各地で広がっています。
「課題を解決する」「価値を高める」ためにマンパワーを集め、福祉・環境・教育・食・農業・観光…さまざまな分野で起業しているのです。NPO・ワーカーズ・任意団体・株式会社…その組織もまたさまざま。
おおぜいで出資するほか、補助金獲得、ファンド・市民バンクの活用、信用金庫・労働金庫から資金借り入れなどの道が開けてきました。
これまで自治体に囲い込まれていた税金と情報が事業を通じて市民の手に取り戻せます。事業の中で明らかになった課題は「行政に提案する」「自ら実現する」「実現する人たちを応援する」などの方法で活かせます。
市民事業は将来にむけて大きく広げていきたい地域の人の輪づくりです。
(事務局長 藤本)
富士見を住みやすいまちに!制度づくりへ
都心から電車で30分、新興住宅が多い10万人の街。教育、食の安全、環境、農業など話す中で、この街で安心して暮らし続けるためには家事・介護の助け合いが必要だと考え、10年前に5人で立ち上げたのが「グループみずほ」です。
現在「福祉NPOグループみずほ」として、介護保険や障がい者自立支援法を使いながら、病院内の受診世話や障がい児通学・通園送り迎えなど、制度を超えたニーズにも応え、市民にとってなくてはならない事業者となっています。
市民事業やNPOに対応する制度がなかったため、「グループみずほ」は支援や情報提供などを市に働きかけてきました。富士見市民ネットワークも代理人(議員)が、市民との協働やNPO支援について議会で質問・提案し、地域福祉の協議に出席するなど連携しています。
市内には14年前から地域に安心、安全なお弁当を届けるワーカーズ「あい」があり、昨年はリサイクルや手作り品のお店「ホット・スペースりぼん」もできました。
富士見市民ネットワークはこれらの市民事業で働く人や利用者、地域にある市民グループなどと話し合いや交流の場をつく り、市の情報を提供したり市への要望・提案を議会に届け、より良い制度にしていくことを目指しています。
事業化が課題の精神障がい者や子どもの自由な居場所づくりにも応援をして、まちづくりを進めていきたいと考えています。
(富士見ネット 丸山あき子)
越谷のリサイクルcafe こぶくろの場合
ちょっと普通のリサイクル店と違います。衣類、バッグなどブランド品から、鉛筆1本、チャックや布切れ、毛糸1玉…古い什器まで、何でもあるのです。かわいい中古毛布をワンちゃん用に買っていく方、骨董品がないかブラリと年配の男性、毎日来てくださる方も……。
ここの品物はすべて無償提供。これまで延べ1000名近くの方が寄付してくれました。ゴミになったかもしれない物が、必要な方に喜んで買われていく、雑多な物があるから楽しい…そんな資源循環の拠点になっています。
ここの店員は日替わり。20~60才代、車椅子の人や知的障害のある人など男女20名、実に多様です。みんな対等に出資して平等に働いています。重度の知的障害の人も、お客さんへの声かけ、雨戸の開け閉め、そうじ、値札書きなど楽しく働いています。
2階を使った講座事業も、絵手紙や俳句、パッチワークなど少しずつ広がって、昨年は「こぶくろ」文化祭を開催し好評でした。
開業2年、そんな姿が街の中に「あたりまえ」に受け入れられるようになってきました。このような事業を市内に広げたいと思っていますが、バリアもあります。たとえば障害者と共に働いていても現行制度から漏れるために補助がなく、「こぶくろ」の時給は全員200~300円台、経営努力は最大限するつもりですが限界もあります。
市には、このような市民事業が担う「新しい公共」の重要性の認識とそれを守り育てる制度づくりを働きかけたいと思います。そのためには、条例に書き込む運動や、支援のあり方を担当課と話し込んでいく必要があると考えています。
これからは「こぶくろ」のような市民事業やNPOが「公共」サービスの多くを担う時代になります。行政の財政的な事情だけでなく、市民の目線でつくりだすサービスには多様性や独創性、身軽さがあり、より地域や個人の思いに添えるという特長があります。たくさんの人が働くことで、心身が健康になり街が活性化します。
越谷市民ネットワークのスローガン「私たちの街,私たちの手で」のひとつの形、「新しい公共」の活躍する街を、「こぶくろ」からネットと共に発信していきたいと思います。
(越谷ネット・元代理人 加藤佳子)