埼玉県市民ネットワーク通信 NO.35 2005年10月

【目 次】

【教科書】つくる会教科書 県内は採択せず

扶桑社の社会科教科書「埼玉県で採択ゼロ!」という報道が,すぐには信じられなかった。上田知事が「つくる会教科書支持」を表明し、多数市民の反対を押し切って「つくる会元副会長高橋史朗氏を県教育委員に任命」していたし、相川さいたま市長が「推薦」表明,春日部市議会は「採択」決議,川口でもつくる会が活発に動いていたから

4年に1回の教科書採択にあたり、県ネット「教育と平和プロジェクト」を設置し、他団体とも協力して扶桑社教科書採択阻止をめざした。「採択ゼロ」という数字は、おおぜいの市民による団結の成果だという実感がある。全国でも8月末に公立583地区で採択が終わり,採択率を0.4%に抑えることがで きた。しかし,残された課題も多い。

  1. 01年に文部科学省が「教育委員の権限と責任」による採択を指導,現場の教師や市民の意見を取り上げない仕組みに変えた。その結果,たった5人の教育委員がすべての教科書の採択権をにぎることになった。
  2. つくる会の教科書を通すために教科書検定基準を右よりに修正したため,一度は各社の歴史教科書にあった従軍慰安婦の表現が消え,加害責任の反省や戦争の悲惨さの記述が減少した。

中国や韓国・朝鮮の教科書とも読み合わせながら歴史の真実を見きわめる必要がある。
これからが本番だ。(川口・辻)


【衆議院・自民単独過半数獲得】選挙、この結果を どうする !?!

9月11日の衆議院選挙は自民党が圧勝しました。単独過半数獲得(296議席)のみならず、与党が3分の2を超える327議席を占め、改憲の発議も出来てしまう状況で、「こんなに差がつくとは…」という声がたくさん聞かれました。

玉県市民ネットワークはこの選挙を自民党中心の政治にストップをかけるチャンスととらえましたが、全国のネットとともに応援した民主党は113議席と大敗し、政権交代は遠のきました。

「郵政改革」のみで選挙が争われたことは大変残念でした。暮らしを大きく左右する増税、年金、福祉、地方分権、外交、平和、政治改革など、有権者自身の判断が必要な問題がたくさんあったからです。期間の短いこの選挙を自民党の策略に乗せられ応援したマスコミの責任は大きく、国民に必要な情報 を正確に早く届ける役割が問われます。

政策実現を公約する「マニフェスト選挙」は市民の選択に役立つと期待されました。民主党マニフェストは優れたものでしたが分かりづらく、不発に終わりました。

また今選挙の結果から小選挙区制について疑問が多く聞かれました。得票率を見ると自民党48%・民主党36%でしたが、獲得議席は219対52と4倍の開きで、次点以下が大量の死票になってしまう問題があります。しかし、右から左までの寄せ集めで意見がまとまっていない、地域での日常活動がない等、民主党の弱点がはっきり出たともいえます。選挙協力で大きな役割を果たした公明党の与党としての責任も注目されるところです。

日本が「強い者がひとり勝ちする格差社会」へ、そして「改憲し、戦争のできる国」に突き進もうとしていることは、みんなが日々の暮らしで感じていることです。世界を見渡せばアメリカと日本のみが別の道を選び、近隣アジア諸国に仲間といえる国を見出すことはむずかしく、ひとつの地球に暮らす大切な仲間がまた少なくなった感があります。これから日本が進む方向に不安を覚えざるをえません。今こそ国政に関心を持ち、はっきり意見を言い続けることが必要です。

「戻ることのできない道を曲がった」のでなく、私たち一人ひとりが政治へ関心を持ち、じっくり考え、人と話し、自分で判断し行動するという参加型の草の根民主主義を大切にすることで、方向を変えることが可能です。埼玉県市民ネットワークは政治を市民の手に取り戻すことをめざして、分かりやすい言葉で市民に語り続け、情報を共有・活用し、仲間を増やす活動を進めます。 (藤本)


【05年ネット夏の研修】みんなが安心して元気に生きたい 未来のためにちょっとずつ

私たちは戦後60年から受け継いだ正負の遺産を検証し、将来を見通す政策「グランドデザイン」作りを進めています。 夏の研修では、「食と農」「水」「緑」「自然エネルギー」「学び方・働き方」などについて熱い意見を交わしました。

「生活保障」や「平和」を加えた13項目について年内にまとめ、06年定期総会で発表する予定です。この政策の検証と充実のため、総合アンケートを実施します。ご協力を!


【国勢調査】このままで いいの?

10月1日、18回目の国勢調査が行われました。調査の基本は国連人口統計のためで、それは住民台帳と外国人登録でも十分可能です。にもかかわらず大正時代からずっと、たくさんの項目が入ったままの全戸調査が続いています。

今回は調査票とともに『封入用封筒』が初めて全戸配布されましたが、事前に配布された『調査についてのお知らせ』には封筒使用に関する記載が曖昧でした。横浜市や練馬区では封入・郵送提出の方法がとられました。あなたの町では調査員から封筒についての説明はありましたか?

いっぽう行政からは、調査員の記入チェックがないと大変だ(封入されてしまうと職員の作業となる)との本音も聞こえています。

今後各市町村は、調査結果をまとめるとともに、『国勢調査実施状況報告書』に問題点等を記入して国・県へ報告します。調査を受けた市民の側も、いろいろな疑問や問題点を明らかにし、見直しにつなげていきます。


【容器包装】リサイクル法 どう変わる? どう変える!

97年施行された容リ法は、事業者に再資源化費用の一部負担を義務付けました。この法律でゴミ減量による埋立地の延命、ペットボトル等軽量化による資源節約が進みました。

 しかし集収・運搬・圧縮・保管の費用が自治体負担となり、リサイクルが増えるほど税金支出は増え、市民は簡単にペットボトルを使い、事業者はいろいろなワンウエイ容器を開発し、生産量が増え続けています。

その他のプラスチック容器包装の再資源化も進んでおり、現在では再資源化費用の多くをこれが占めています。

 この法律は10年で見直すことになっていますが、処理費用負担の公平化、ゴミを根本から減らすための法改正が重要です。

「容リ法改正を求める全国ネットワーク」が署名活動を開始し、

  1. 収集・運搬・圧縮・保管の費用を製品価格に含める
  2. リデュース(使わない)・リユース(繰り返し使う)・リサイクルの優先順位で進める

を主旨に、国会提出しました。現在国で改正案を検討中です。

一方業者のなかでは、「スーパー等中味を詰めて売る側に負担が重く、包材を作るメーカーの負担が少ない」「費用を払わない業者が少なくない」と不公平感を持つ団体もあり、改正に反対しています。

生活クラブと地域ネットは昨年、廃棄物会計に取り組み、リサイクルのためにかかる費用を割り出し問題提起しました。

多種類の容器包装プラスチックが出回っています。これらを使う人も使わない人も税金による一律負担とは納得がいきません。消費者も事業者も一緒になって循環型社会の実現に踏み出しましょう。


【学習会報告】身近な化学物質から 子どもを守る

生活クラブ寄居支部と寄居ネットなどの共催で “化学物質と子どものアレルギー”をテーマに学習会を開きました。

化学物質は戦後急激に大量に生産されて、私たちの生活に欠かせないものとなっています。「蓄積性」「分解しにくい」という特性があり、地下資源だったものが加工されて製品となり、廃棄されて燃やされても、その物質は形を変えていつまでも、大気など地球上に存在し続けます。

経口で体内に取り込まれるとある程度は排出できますが、皮膚や肺から直接入った場合、なかなか排出できません。自然界に以前から存在していたものと違い、ここ60余年に作られた未知の物質で、体の浄化システムの進化がそれに追いつかないようです。

その影響は、免疫系に現れるとアレルギーや花粉症・膠原病など。内分泌系に出ると生殖器の異常・男子の精子数低下・女子の早熟など。自律神経系ではシックハウス症候群など化学物質過敏症・情緒不安定・LD(学習障害)・ADHD(多動症)など。

 このように化学物質は、体や神経などが形成される、胎児からの子ども達に大きな影響を与えます。

学習会の参加者は25人、寄居町内だけでなく比企・秩父など遠方からも来ていただき多様な顔ぶれでした。講師の佐藤禮子氏は現在短大講師、コミュニケーションを取りながらのお話で、参加した皆さんも自分のこととして受け止められたようです。