埼玉県市民ネットワーク通信 NO.41 2007年7月

【目 次】


<8月の知事選>市民の選ぶ権利は?

急な退陣で行われた選挙で上田知事が誕生して4年、8月末には再選を問う知事選が実施されます。上田県政で暮らしがどう変わったか、教育と環境の面で検証しました。

埼玉県は寄居町に06年、「彩の国資源循環工場」を開設しました。「持続可能な資源循環」モデルとして全国初の大規模事業を謳うもので、PFI事業(民間活用)でサーマルリサイクル(熱分解ガス化溶融方式)をはじめ9社のリサイクル事業があり、県内外の一般廃棄物と産業廃棄物が搬入されています。

「持続可能な資源循環」とは本来、自然の生態系が維持できる範囲内で行なわれるべきもの。上田県政のもと、ゴミの広域処理化の支援、県主導の大量リサイクル振興などゴミ産業が加速度的に膨らんでいます。

汚染の発覚

6月操業開始、危惧していたとおりサーマルリサイクル施設から、鉛(環境基準27倍)やダイオキシン(同6倍)が塩沢川を経て荒川へ流出しました。

異常発生から3ヶ月県は事実を隠し、平常値に戻ってから町・各環境協議会会長へ報告。新聞報道があるまで一般住民に対する広報はありません。運営協定にある「問題発生時の操業停止」「情報公開」は守られませんでした。その後も六価クロム、カドミウムの大気排出など問題は続いています。

第2期事業へ

県はさらに2期事業として、処理の難しい廃棄物のリサイクル施設や最新技術を導入した廃棄物埋立地の整備を計画しています。

まちネットワークよりい

03年より学習会や県環境評価基準書へ意見書提出、公聴会の公述、技術審議会傍聴などに取り組んできました。また、地域住民と「工場と環境を考えるひろば」を立ち上げ、周辺の松葉ダイオキシン調査を実施。

 今後も住民主体の監視体制で安全性の確保、「脱焼却・脱埋め立て・発生抑制の仕組みづくり」を働きかけて行きます。

(大北)

■■ゴミの削減をはじめ、「県民の健康や自然を守る」総合的な環境行政を求めます。


国の教育政策の転換とともに、県の教育環境は息苦しくなってきました。上田知事は教育委員会の審議や人事について「自分の意に沿うよう実行してもらう人材を送り込む、そういう意味での教育の中立はありえない」と明言しています。

県教育委員選任

任期途中の教育委員を退け04年、高橋史朗氏を任命したことに多くの批判の声が挙がりました。氏は「新しい歴史教科書をつくる会」副会長であり、扶桑社歴史教科書を監修し、採用運動の主要メンバーでした。

新しい歴史教科書の選定

知事は採択に先立ち「扶桑社教科書の内容を評価する」と表明しました。特定の教科書採択に向けて教育委員会の中立性を侵すことは大きな問題です。

県ネットは展示会場で各社の教科書を比較検討し、扶桑社の歴史教科書は採択して欲しくないと結論しました。各教科担当教師による選定意見も「否」と出され、埼玉県での採択は行われませんでした。

県立高校の統廃合

公立より魅力のある私立を応援し、少人数の夜間高校は非効率として統廃合を進めています。学習に困難をかかえる生徒へさらに負担を押し付けるものです。

いじめ問題

不登校や自殺者まで出たいじめ、知事は「厳罰でのぞみ、出席停止も辞さない」としています。しかし、いじめは当事者だけの問題でなく学校全体で取り組む必要があり、厳罰主義は子どもの心を傷つけ根本的な解決に至らない可能性があります。

(加藤久)

■■子どもや保護者、教育現場の意見に耳を傾けた「希望のある」教育行政を望みます。


地域社会を市民自らが変えていく-座談会-ネット運動と代理人

出席 
神田 順子(三芳町2期目)
加藤久美子(富士見市1期目)
末吉美帆子(所沢市・新人)
辻  浩司(越谷市・新人)
加藤 佳子(前県ネット代表・元越谷市議)

6月議会が終わったばかりですが、初めての一般質問はどうでしたか?

自分がこれまで関わってきた障害者雇用と、ネットがやってきたBDF(菜種油や廃食油を使った自動車燃料)を取り上げました。専門用語を使わない、絵や実物を見せるなど、分かりやすいよう心がけました。傍聴者も多く評判が良かったようです。

末吉

 4つのテーマを取り上げました。辻さんと同じ障害者雇用とBDFのほか、成年後見制度とウォーキングロードです。ウォーキングロードの質問は、ネット会員の「街にイスがあったらいいのに」という声と市の健康福祉計画が結びついてできあがりました。

議員になって2年の加藤(久)さん、 2期目の神田さんはいかがですか。

加藤(久)

市の職員と日ごろからよく話しますが、一般質問でいい答えを得ることがどこまで実際の成果につながるのか、疑問を感じています。

神田

一般質問での答えには予算がからむので、はっきりした答えは期待していません。議場では課題と町の状況の確認をしたうえで提案を入れ、議会のあとで担当課に具体化を働きかけます。ここは町民には見えにくいのでネット通信で知らせています。

議会には予算や決算はじめたくさんの案件が出されますが、賛否や意見などどうやって決めるのですか。

加藤(久)

富士見では議員への議案説明と資料を基にネットで話し合って決めています。でも実際はその場で決めなくてはならないことも多く、ネットメンバーの顔を思い浮かべながら判断しています。私の後ろにはネットの仲間と多くの市民がいるというのが、代理人の強みだと感じます。

ネットが目指す「市民の政治参加」について大切にしてきたことはありますか

神田

おととし、道路整備の前にミニフォーラムを開いて地元住民と役場職員との話し合いができました。両方が話し合いを嫌がらなくなった気がします。利益誘導をしないネットが間に立ったことも良かったと思います。

加藤(佳)

情報提供や助言などで市民団体を側面から応援してきたのが越谷ネットの特徴です。議員には情報が多く入り、市役所の中でやりたいことがどんどん増えてきます。でも私は、市民の意見を聞く場に飛び込んで市民のつぶやきを議員が一緒に政策化していくことが、まちを変えられるという市民の実感につながると考えてきました。代理人は議会の中と外の活動のバランスに気を付けなくてはいけないですね。

これまで、議員というのは勝手に解釈する人と思っていました。代理人とはだれの代理人なのか、障害者やニート、フリーターとか、しんどい思いをしている市民としっかりつながっていくことを大切にしたいと思います。

加藤(佳)

任せておきなさいという議員が多い中で、一緒にやりましょうと言うのが代理人。市民にとってネットは世の中を変えていく道具だと信頼してもらうこと、難しいけれどこれが目標ですね。

一人では分からないからこそ、ネットが必要なのですね。最後に、越谷ネットは代理人を出して16年になりますが。

加藤(佳)

ゴミ問題にしても市民参画にしても成果が出るには時間がかかります。ゴミの分別実現は15年かかりました。あきらめない、言い続けることが大切です。提案し続けてきたから実現できたと市民に伝えています。

(7月10日・浦和)


統一地方選挙結果報告

★ご支援ありがとうございました


新体制決まる!!

埼玉県市民ネットワークは6月30日(土)、臨時総代会を開催し、役員改選と予算案を決定しました。新しく選ばれた役員は以下の通りです。

共同代表  神田順子 辻 浩司
事務局長  藤本敦子